「この、馬鹿が!!あんな無茶をするやつがあるか!!」

ランスロットから姿を現したスザクに、ルルーシュは怒鳴りつけた。

河口湖でのテロ騒動は、黒の騎士団の手により解決した。
それはブリタニア軍としては面目丸つぶれであり、腹立たしい事ではあるが、こちらの兵力を使用せずに人質全員救出されのだから、結果だけ見るのであれば最高の成果を上げていた。
ルルーシュが腹を立てているのは、その過程で起こったイレギュラーに対してだった。
イレギュラーの元は異母姉であるコーネリア。
今回のテロ事件と、その人質の中にユーフェミアがいる事を聞きつけたコーネリアが、強制的に外部通信を繋げてきたのだ。そして、誰が送ったのか地図や図面もすでに手にしていて、総督であるクロヴィスと補佐であるルルーシュを差し置いてその場の指揮を取り始めた。
テロリストの意識がゼロへ向いている今がチャンスだと、KMFによる一斉攻撃を行うと宣言。既に失敗していた地下からの進行を再び行い、そちらにテロリストの注意をひきつけ、全軍上げて地上から攻撃を仕掛けユーフェミアを救出するという手荒な策だ。
エリア11に関して何の権利も持たない皇族の越権行為。
クロヴィスもルルーシュも危険すぎると反対したが、コーネリアは二人よりも上位の皇族であること、植民地政策に軍人として多大な貢献をしていることで「これは決定だ!戦いを知らない素人が口を出すな!!」と、怒鳴られてしまえば、下位の皇族で軍務において功績を残していない二人には反論する事は出来なかった。
地下進攻。
固定砲台が設置されていると解っている場所へ入るなど自殺行為でしかない。
当然、ルルーシュもクロヴィスも死を覚悟で特攻させる者を指名など出来ない。
その様子を、コーネリアは「お前たちは甘すぎるのだ」と一笑し「兄上の特派に、イレブンの乗るKMFがあったはずだ」と、口にした。イレブンなら死んでも構わない。捨て石になれ。そう命じる姿に、ルルーシュは憎悪しか感じられなかった。
ロイドはコーネリアの申し出に大喜びし、作戦は開始される。
無理をせず、地下にいる解放戦線の足止めだけしてくれればいい。
そんなルルーシュの願いなど届く筈も無く、スザクは単身特攻を仕掛けた。
世界で唯一の第7世代ランスロットの性能と、スザクの反射神経でどうにか乗り越える事は出来たが、一歩間違えれば死んでいた。そんなギリギリの攻防だった。
意識を向けるだけでいい。
それ以上はコーネリアでさえ望んでいなかったというのに。
結果としてスザクは大きな功績を残したが、独断による特攻にルルーシュは怒りをあらわにし、スザクに怒鳴りつけたのだ。

当のスザクは、作戦が成功したのだから褒められるなら解るが、どうして怒鳴られているのだろうと、目をぱちくりとさせていた。

「確かに危なかったけど・・・でも、何とかなったじゃないか」

平然と軽い口調で返されたことで、ルルーシュはますます怒りで顔を赤くし、フルフルと体を震わせ、スザクをきつく睨みつけた後踵を返した。
更に何かを言って来るだろうと構えていたスザクは肩透かしを食らい、怒りに震えたまま何も言わずに立ち去ろうとするルルーシュに、これは拙いと慌てて駆け寄った。

「ルルーシュ、まっ・・・じゃない、ルルーシュ殿下、お待ちください!」
「煩い!黙れ!着いてくるな!!」

もういい!お前と話すことなどもう無い!!
完全な拒絶に、スザクは慌ててルルーシュの前に回りこんだ。

「殿下!」

慌てて縋る様に呼ぶが、ルルーシュは冷たい視線を向けて睨みつけるだけだった。

「黙れと言っている!私の命令にこれ以上逆らうな!下がれ枢木!!」

皇族としての命令。
人目がなければ食い下がれるのだが、ここは人目が多すぎた。
スザクはイレブン。
ルルーシュは皇族。
そもそも話しかけること自体が無礼なのだ。

「・・・イエス・ユアハイネス」

スザクが下がると、ルルーシュは一瞥すること無くその場を後にした。
心配そうな表情でこちらを伺うキューエル達に守られ、ルルーシュの姿は見えなくなる。

「あーあ。怒らせちゃってぇ、大丈夫なのかなぁ」

僕しーらない。と、ランスロットのデータが取れたことで大喜びしながら言うロイドに、セシルの鉄拳が飛んだ。

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